相続:遺言書を見つけたら?(その2)

前回の記事の続きです

遺言の検認が済めば,今度は,遺言の内容を実現していく必要があります。

その実現方法は,遺言の内容によって変わってきます。
遺言の内容を前提に相続人全員で遺産分割等の手続をすれば足りる場合もあれば,遺言執行者を指定して職務を執り行ってもらわなければならない場合もあるからです。
遺言執行者とは,遺言の内容を実現するための仕事(遺言の執行)をする者のことです。

次のようなルールで選ばれることになっています。

・遺言で遺言執行者が指定されている場合遺言で指定された者
・指定されてないor指定された者が亡くなっている場合家庭裁判所が選任した者
後者の場合,相続人が,遺言執行者の選任を家庭裁判所に求めることになります(手続は裁判所HP参照)。

そもそも遺言によってなし得る事項は法律上次のように限定されています。

① 財団法人設立の意思表示(一般財団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
② 認知(民法781条2項)
③ 未成年後見人の指定(民法839条)
④ 未成年後見監督人の指定(民法848条)
⑤ 推定相続人の廃除又はその取消し(民法893条,894条)
⑥ 祖先の祭祀主宰者の指定(民法897条1項但書)
⑦ 相続分の指定,指定の委託(民法902条)
⑧ 特別受益者の持戻しの免除(民法903条2項)
⑨ 遺産分割方法の指定,指定の委託(民法908条前段)
⑩ 遺産分割の禁止(民法908条後段)
⑪ 相続人相互の担保責任の分担(民法914条)
⑫ 遺贈(民法964条)
⑬ 遺言執行者の指定,指定の委託(民法1006条1項)
⑭ 遺贈減殺の順序,割合の指定(民法1034条但書)
⑮ 信託の設定(信託法3条2項)
⑯ 生命保険金受取人の変更(保険法44条1項)

たとえば,②子の認知が遺言の内容となっている場合,遺言執行者を選任しなければ認知の届出ができないので(戸籍法64条),遺言執行者を選任する必要があります。

他方,遺言と言えば,典型的には,⑦相続分の指定,⑨遺産分割方法の指定,⑫遺贈といった遺産をめぐるものが多いですが,相続人さえいれば遺産分割協議をすることもできるし,不動産の登記や預金の入出金などの手続も相続人全員の同意があればできるため,必ずしも遺言執行者を選任しなければならないわけではありません。
ただ,相続人や遺産に含まれる財産が多い場合には,財産を整理して全員の同意を取りながら手続を進めていくのに時間と手間がかかってしまうため,遺言執行者を選任する方が良いでしょう。
また,相続人や遺贈を受けた受遺者らの間に潜在的な対立がある場合には,遺言執行者が中立な第三者として手続を取れば,関係者同士で遺言の執行に無用な不信感を抱き合うことなく進めることができるというメリットもあります。

相続問題には,その他にも,遺産の調査や相続人の調査など,遺言の執行や遺産分割協議にとりかかるまでに難しい問題がたくさんあります。

お悩みの場合には,当事務所へお気軽にご相談ください。
(毛利 圭佑)

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